■INDEX
>>Toppageへ
>>第1回(2003.6.17 updated)
司馬遼太郎も通った、ますだ
(京都・先斗町)
>>第2回(2003.6.30 updated)
蕎麦味噌と「北の譽」辛口で、至福のひととき
(北海道・小樽「籔半」)
>>第3回(2003.7.1 updated)
1階でワインを買って、2階で飲めるお店
(大阪・天王寺「ワッシーズ・ダイニング・スープル」)
>>第4回(2003.7.15 updated)
芝居の余韻を楽しむには、ブションが良い。
(大阪・千日前「ブション」)
>>第5回(2003.7.18 updated)

「男の隠れ処」――居酒屋 蔵

(大阪・塚本「蔵」)
>>第6回(2003.10.21 updated)

手造りの日本酒「本郷 壱岐坂」は、いつもしぼりたて

(東京・本郷「酒舗オオタ」)
>>第7回(2003.10.29 updated)

様々なチーズとワインのハーモニーを堪能しよう!

(大阪・中央区「フロマージュ・エ・ヴァン・クレオール16」)
>>第8回(2004.3.24 updated)

いつか一番好きな人と行きたい

(東京・新宿区神楽坂「渡津海」)
>>第9回(2004.5.13 updated)

自分に取り戻した日々のために

(東京・中野区中野「ブリック」)
>>第10回(2004.9.13 updated)

木札で料理や飲み物を注文

(東京・浅草「酒膳一文」)
>>第11回(2004.12.17 updated)

こんな場所にあることが奇跡である。

(東京・府中「息庵」)
>>第12回(2005.7.20 updated)

日本三大酒場のひとつで究極の酒「神亀」を味わう。

(大阪・阿倍野筋「明治屋」)
>>第13回(200511.9 updated)

志受け継ぐ「食にこだわる」店。

(愛媛・宇和島「ほづみ亭」)
何度も行きたい店がある。
第2回(2003.6.30 updated)

蕎麦味噌と「北の譽」辛口で、至福のひととき(北海道・小樽「籔半」)
くつろぐ蕎麦屋での昼酒

明治の栄華をしのばせる運河らく小樽に病身を養っていた古い友人が昨年亡くなった。その友が愛した店がここ、「籔半」である。小樽に着いたその晩は、地元の人が行く旨くて廉い寿司屋で旧交を温め、あくる日の昼下がりを「籔半」で語らうのが約束ごとになっていた。蕎麦屋の昼酒は寛ぐものであるが、「籔半」では特にその想いを強くした。

治のころから小樽は大いに栄えたという。街を歩くと日本銀行小樽支店、旧日本郵船小樽支店、旧北海道銀行本店など、明治時代に建造された洋風の建物群、同じく明治からの倉庫、商店、富豪のお屋敷など昔の栄華を伝える建築物が沢山ある。「籔半」のある静屋(しずや)通りは第四代北海道開発長官、北垣国造の号、静屋(せいおく)に由来する。「籔半」の隣に本間内科という古風な医院があるが、ここはかつて石川啄木が勤務した「小樽新報社」跡で、向かいの駐車場奥の瓦葺きの石蔵は伊藤整の小樽商大時代の下宿先であるという。

小樽軟石造りの蔵座敷

籔半の写真の静かな通りに面した店は前に大きな柳を配した純和風の佇まいである。店内は土間にテーブル席が7〜8卓、落ち着いた空間につづく奥の蔵がこの店のシンボルなっている。なんでも、鰊漁最盛期の大網元の別邸にあった小樽軟石造りの蔵座敷をそのまま使用しているとのことである。蔵の二階はちょっとした宴会のできる座敷になっているが、われわれは靴を脱いで上がる一階奥の小机に座り込むのを常としていた。石蔵の空気がひんやりとこころよい。
地元の銘酒「北の譽」酒は地元の北の誉、「北の誉辛口、冷やでね」と、友はいつもそう告げていた。まもなく、小ぶりの片口に入った冷やが自家製の蕎麦味噌とともに運ばれてくる。その間につまみの注文を考えるのもまた楽しみである。まずは「そばもやし」のお浸し、鴨とねぎの「あいやき」、定番の「いたわさび」あたりから。酒がすすみ、ふと前がさびしくなったら、「あつやきたまご」か「やきのり」、気が向いたら「お刺身」、もちろん「ぬき」もある。ご存知であろうが、「ぬき」は蕎麦のたね物から蕎麦をぬいたもの。この店では「てんぬき」と「かしわぬき」がある。
セイロで閉めて、お土産には「蕎麦味噌」蕎麦もお酒もおつまみも逸品

主(現二代目)は工学系の大学の出身と聞くが、機知とサービス精神に富んだ人とみえ、店に置かれている「おしながき」はコンピュータ製版の100ページ近い力作である。これを読んでいくと、蕎麦もお酒もつまみも相当に吟味されたものであることがよく分かる。店舗の空間が心地よいだけでなく、そういう心遣いがお客の時間を一層快適にしてくれる。

麦屋の酒は二合くらいにしたいものだが、久しぶりの語らいについ「もうひとつ」となり、亡き友の口癖の「至福のひととき」が出るころにはだいぶ出来上がってしまう。飲みすぎないうちに、道内産の地粉を使ったセイロで宴をしめて、お土産に自家製の「蕎麦味噌」を買う。表に出れば、柳に吹く風もさわやかな小樽の初夏であった。(昌)

「籔半」
北海道小樽市稲穂2-19-14 静屋通り
TEL 0134-33-1212
URL http://www.yabuhan.co.jp/

「籔半」のご主人からメールをいただきました。→
Toppageへ | 前へ | 次へ
Copyright(C)2003-2008 Shirakawa, Mori, Inabayashi, Kimishima and Colleagues
All Rights Reserved.